【大震災と11春闘を振り返って】
2011年5月10日 電機労働者懇談会
《一時金増額が焦点に》
賃上げ要求を早々と見送った「連合」系労組の焦点は、もっぱら一時金の増額に集中しました。自動車では、トヨタ・日産・本田などが満額回答でした。しかしながら、東芝やパナソニックなど電機主要労組では業績連動方式をとっているため、改めて産別格差が問題となります。個別要求をしている組合では、三菱が5.74ヶ月(5.77要求)で最高、日立は5.3ヶ月(5.5要求)でした。
《企業別組合の弊害が明らかに》
連合では、賃金水準が97年から5%下がっていることを根拠に、今春闘では「賃上げを含めて1%」を要求しました。しかし、賃金カーブを維持してきたとする電機主要労組は、「賃金水準が下がっていない」として逆に賃上げを要求しない理由としました。これはあくまでもモデル賃金に過ぎず、電機連合調査でも賃金水準及び可処分所得は大幅に低下しています。全労働者や国民の視点にたてない企業主義的組合の弊害が改めてクローズアップされました。
《震災の影響が非正規に》
今春闘では連合でも、「パートの時給引き上げ」や「非正規の正社員転換制度」などが提起されました。ところが、無給休業や派遣切りなどが被災を受けた東北だけでなく全国的に広がっています。このような事態を受けて、雇用を脅かされた労働者自身が立ち上がり「震災ユニオン」を4月11日に結成しました。委員長の木下さんも「日立オートモティブ」の群馬で派遣として働いていて、4月末に雇い止めを通告されています。「自動車メーカーの減産が原因というが、社員は土日も出勤している。ちゃんとした説明がなければ納得できない」としています。震災の影響により、またしても非正規労働者に集中した犠牲を強いることになっており、派遣法の抜本改正や有期雇用制度廃止などの取り組みが急務です。
《震災を利用する経営者》
震災後の急激な円高(76円戦後最高値)は、円の資金需要が増大するとみたハゲタカファンドがしかけたものでした。災害を食い物にする資本の象徴例です。関東私鉄では、「回答できる環境でない」として回答が大幅に延期されました。95年に起きた阪神大震災のことを想起させます。このとき以降、私鉄労使の集団交渉が崩壊し、今日までの「個別交渉」にゆだねられることになりました。問題なのは、被災地以外のところで災害を口実に悪乗りしていることです。春闘での交渉の凍結や中止だけでなく、無給の休業やシフト(休日)勤務などの労働条件の切下げや、解雇・派遣切りを当然なこととしています。「災害を利用する経営者」の動向を注意深くみることが必要です。
以上
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